本の中を旅する

伺うといつも季節の草花が玄関に飾られているお宅があります。

お庭には季節ごとに葉の色が変わる木々やお花たち。「落ち葉を拾うのも、雑草を抜くのも大変だけれど、毎日新しい発見や出会いがある」と、もうすぐ90歳になられる奥様はおっしゃいます。

「出かけられなくても退屈することはないのよ」という笑顔に、お庭を旅されているようだと思いました。

植物の名前も詳しくない私はお庭で旅することはできません。でも本を読むとき、その中で旅をしているような気持ちになります。

“日本史の謎は「地形」で解ける”という本を読んだときは、歴史的事実が日本特有の地形や気象に影響されて動かされていたという仮説の下、語られていました。

○○年に○○という事実だけでなく、なぜそこに幕府をひらいたのか?など、その時の武将の気持ちになって考えることができ、自分がその時代にいるかのようでした。

また、エッセイでちょうど今の私と同じ年頃の向田邦子さんが、東京のマンションの一室で味醂干しについてうんちくを垂れるところは、気の合う友人の部屋で話をしているようで、やっぱりこれくらいの年齢になると食べ物にもうるさくなるのかと心の中で相槌をうちます。

本は時空も場所も超えてはるか遠くに、時には身近に旅をさせてくれます。

おうちで本の旅はいかがでしょうか。

参考:『日本史の謎は「地形」で解ける』 竹村公太郎

   『眠る杯』向田邦子

    前の記事

    想いを返す